開設以来約10,000例の心臓、胸部大動脈手術を実施。
負担の少ない内視鏡、ロボット心臓手術で、各科と連携して対応します。
当科は、開設以来約10,000例、近年では、年間500例前後の心臓、および胸部大動脈手術を行ってきています。手術数は当然ながら熟練に通ずるものですが、患者さんは心臓以外にもいろいろ問題を抱えている場合もあります。各科が充実した総合病院の一部門として心臓手術を行っていますので、単に手術数が多いだけでなく複雑な病態にも各科協力して対応できるのが当科の特徴といえます。患者さんは遠方からも含め、多くは他院からの紹介患者さんです。
主な疾患
- 狭心症
- 心筋梗塞
- 不整脈
- 心臓弁膜症
- 心膜疾患
- 大動脈解離
- 大動脈瘤
心臓血管外科の特徴
丁寧に落ち着いた、合理的な手術を行います
当院では、上記のように十分な臨床レベルを保障するだけの症例経験がありますが、そのうえで以下のような基本姿勢で手術に臨んでいます。
第一に、無駄がなく揺るぎない手技を積み重ねて手術を構成することを常に念頭に置いています。
当院の手術時間は、特に小切開手術などは一般よりずいぶん短いと各病院に出入りする医療器具業者の方々や、新しく赴任した先生、見学にいらっしゃった先生たちに言われます。
しかし、決して急いだ動きは術中ありません。手術にはやり直しの効かないポイントがいくつかあり、その部分は極めて慎重に行わなければなりません。早い手術に早い動きなど必要なく、「目にも止まらないメスさばき」などはマンガの世界だけです。一見普通に見えて実際には早く進んでいるのが良い手術です。もたもたした稚拙な手技は論外ですが、ガチャガチャせわしない手術操作もまた私たちの理想の対極にあります。事前にイメージした手順を粛々とこなす手術を理想としています。
第二に、事大主義の風潮が強い医学界にあって単に伝統的に行われてきた手術法や、逆に流行りの手術法、高名な外国の先生の言葉などに盲従することなく常に手術法を見直しています。そのうえで自らが安全、単純、再現性のある方法と確信できる手術法を採用しています。
今までにも囃されては、知らない間に廃れた方法は心臓外科の世界でいくつもあり(当初非常に期待され、今では名前だけ有名なバチスタ手術など)、自ら判断する賢明さが必要です。
ただし、当院は単に保守的なわけではなく内視鏡下心臓手術など、優れていると確信できる方法はたとえ先例がなくとも慎重な準備のもと始めています。当院で推進していた内視鏡下弁膜症手術は結果的に大動脈弁も僧帽弁も「胸腔鏡下弁形成手術、胸腔鏡下弁置換手術」として2018年4月から通常の手術よりも高く評価される保険診療となりました。
当院は心臓血管外科専門医認定機構の修練基幹施設となっていますので若手心臓外科医に執刀の機会を与える義務があります。そのため定型的な手術の場合執刀医は必ずしも部長、副部長に限りません。次世代の心臓外科医を育てるのは社会にとって医療技術の継承という意味で必要なことです。手術には必ず部長、または副部長(心臓血管外科専門医)がメンバーとして加わります。
術前、術後の説明を分かりやすく行います
外来受診時、術前、退院前に図などを用いて病気と手術に関する説明をします。
退院時には、手術内容をまとめた患者さん用の「覚え書き」をお渡ししています。
ご自身の受けた医療内容につき、その後の他院受診時にも提示できるようご自身で記録、管理されることをおすすめします。
低侵襲心臓手術、MICS(ミックス)の経験豊富です
-ほとんど痛くない心臓手術、胸を開けない心臓手術-
当院では現在、一定の条件を満たした弁膜症手術や心房中隔欠損(ASD)などの患者さんの場合、人差し指の長さまたはそれ以下程度の極めて小さな創で行っています。今までは取り入れている病院が少なかったのですが、2018年4月の保険改訂を機に今後増えていくと思います。当院では十分な準備の後に2010年から開始し2020年7月までにすでに900人以上の方に行っています。
一言でMICSと言っても実はいろいろあります。当院の方法では、大動脈弁置換も僧帽弁形成も体の右脇の肋骨の隙間から一切骨を切らずに行います。開胸器という隙間を広げる手術器具も使わないことが多く、ハイビジョン内視鏡補助、またはハイビジョン3D完全内視鏡下に行うため術後の痛みもかなり軽く済みます。ダビンチを使った手術も行います。
特に大動脈弁置換に関しては、この方法は世界に完全に先駆けて開始しました。さらに世界的にも稀な「完全内視鏡下大動脈弁置換」も日常的に行っています。他の外科領域で常識となった内視鏡手術がほとんど行われていなかった心臓外科も変わりつつあります。
MitraClip経皮的僧帽弁接合不全修復術
-カテーテルによる僧帽弁逆流の治療-
マイトラクリップは2018年より開始された僧帽弁閉鎖不全症に対する比較的新しい治療です。TAVI同様胸を全く切らず足の静脈の血管から心臓へアプローチし、専用のクリップを用いて僧帽弁の逆流を治療します。外科手術では危険性が高い、もしくは向いていないと判断された場合でも適応となる場合があり非常に有用です。
ステントグラフト
-カテーテルによる大動脈瘤治療-
大動脈瘤の手術は通常大きな切開で行う手術です。MICSではほぼ不可能です。しかしその代わり、まったく胸を開けないどころか足の付け根の血管からカテーテル経由でステントグラフトという金属ばねの内蔵された人工血管を血管内で広げて手術に近い効果を得ようという治療法が可能となってきています。
TAVI、カテーテル大動脈弁植え込み術
-カテーテルによる弁置換手術-
MICSが胸をちょっとだけ切る心臓手術なら、TAVIは胸をまったく切らない(またはちょっとだけ切る)心臓手術です。心臓を止めることもない、画期的な方法です。
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