がんの種類と治療

肝がん

 

肝がんについて

肝がんとは

肝臓を構成する細胞には、各種栄養素の合成、分解貯蔵に関係する肝細胞と胆汁を分泌する胆管細胞があり、おのおのの細胞からがんが発生し、それぞれ肝細胞がん、胆管細胞がんと呼ばれています(原発性肝がん)。原発性肝がんの95%は肝細胞がんで占められていますので、以後は肝細胞がんについて説明します。

原因

肝がんの多くは慢性肝障害を背景として発症します。日本では、かつてはウイルス性肝炎を背景とした肝がんが90%を占めていましたが、抗ウイルス治療の普及や新規感染者の減少により、ウイルス性肝炎を原因とした肝がんの割合は減少しています。一方、肥満人口の増加に伴い、脂肪肝などの非ウイルス性肝疾患を原因とした肝がんの割合が増加しています。

肝がんの診療・治療については、厚生労働省の肝がん診療ガイドラインに基づいて行っています。

肝癌診療ガイドライン(外部リンク)

診断

肝臓は予備能力が大きいので、肝がんが発生しても通常の肝機能検査にはがんとしての異常所見が現れないことが多く、そのため一般的には血中腫瘍マーカーや腹部超音波検査(US)によってがんのスクリーニングが行われています。腫瘍マーカーにはアルファフェトプロテイン(AFP)とPIVKA-Ⅱがあります。AFPは肝硬変でも高くなることがありますので、AFPのみで肝がんと診断するわけにはいきません。PIVKA-ⅡはAFPが上昇しないタイプの肝がんや早期肝がんの診断に役立ちます。USは腹部に超音波を発生する機械を当てて観察する検査法です。CT検査はX線を、MRIは強い磁石と電波を使用して撮影し体を輪切りにする方法です。US、CT、MRIで肝がんの存在の有無やその広がりを調べます。また、合併している慢性肝障害の程度も推定することができます。さらに、MRIでは肝臓に見つかった腫瘍の質的診断を行うこともできます。精密検査としては肝血管造影が行われ、肝臓内を走るどの動脈ががんに栄養を与えているか、脈管侵襲(門脈、肝静脈ががんに侵されている)があるかどうかを調べます。また血管造影をしながらCT撮影を行い、通常のCTでは見つけることが難しい主病巣以外のがんを診断します。

病期

肝がんの進行程度(ステージ)は肝がんの進展状況を示すT因子、リンパ節転移の状況を示すN因子、遠隔転移の状況を示すM因子の3因子の組み合わせで決められます。T因子はがんの大きさ(最大径が2センチ以下か以上か)、がんの数(1個かそれ以上か)、がんの分布(左葉や右葉に限局しているか、両方に散在しているか)、脈管侵襲の有無によって規定されています。この病期(ステージ)と次に述べる臨床病期を勘案して治療方針を決定します。

当院消化器内科で行っている治療

当科は、消化器外科や化学療法内科、放射線科と連携して、肝がんに対し集学的な治療を行っています。当科で行う治療としては、ラジオ波焼灼治療(RFA)、エタノール注入療法(PEI)、肝動脈化学塞栓術(TACE)、化学療法があり、以下に紹介します。

 

・ラジオ波焼灼治療(Radiofrequency Ablation:RFA)…ラジオ波により発生する高熱により病変部を凝固壊死させる治療法であり、従来の化学療法や放射線治療とはまったく異なる機序に基づく治療法として各種悪性腫瘍に対して応用されています。なかでも肝腫瘍に対するRFAはその臨床的有用性が多数報告されており、現在すでに日常診療において広く実施されています。

・エタノール注入療法(PEI)…超音波下に皮膚を通して治療用の特殊な針で肝がんを刺してエタノールを注入することによってがん細胞を凝固壊死に陥らせます。がんの大きさが3センチ以内、3個以下のものが適応となります。

・肝動脈化学塞栓術(TACE)…血管造影でがんを栄養している血管が増生していれば、がんのすぐ傍までカテーテルという細いチューブを挿入し、抗がん剤を混入したリピオドールをがんの中に注入してがん細胞を叩きます。さらにゼラチンのような塞栓剤でがんが栄養としている血管の血液の流れを止めてがんを兵糧攻めにしてがん細胞を壊死させます。

・化学療法…肝動脈内または全身的に抗がん剤を投与します。肝がんに対する化学療法は日々進歩しており、当科では新規の分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬、あるいはそれらを組み合わせた治療など、最先端の治療を行っています。

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日本赤十字社 愛知医療センター