詳細な診療情報

血液内科(造血細胞移植)

詳細な診療情報 血液内科(造血細胞移植)

造血細胞移植

日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院造血細胞移植センターは、東棟8階の造血細胞移植センター41床(うち無菌治療室を21床含む)をベースとして、内科、小児科、病理部、歯科をはじめとした他科全科、看護部、薬剤部、リハビリテーション科部、放射線科部、検査部、輸血部、中央手術室、栄養課ならびに事務部から成る造血細胞移植チームにより、病院全部署の協力と理解を得て運営されています。
 センターの概要(スタッフ、症例数、成績など)につきましては、造血細胞移植センターにてご紹介していますので、今ここでは、当センターもその中核病院の1つである日本の造血細胞移植の現況についてお話します。

造血細胞移植センター

はじめに

1960年代後半Thomasらによって確立され、わが国では1970年代半ばに始められた、

  • (1)HLA遺伝的適合同胞を骨髄提供者とし
  • (2)移植骨髄の拒絶を予防するための十分な免疫抑制を患者に施し
  • (3)移植後の血液学的回復が得られるまでの期間患者を無菌環境に置く

いわゆる近代的骨髄移植は、その後移植の真の対象である多能性造血幹細胞の源が、HLA一部不適合血縁者骨髄・HLA表現型一致非血縁者骨髄・自己骨髄・自己末梢血・同種末梢血・臍帯血へと広がるとともに、これらから得られた精製多能性造血幹細胞移植も可能になり、造血幹細胞移植という概念に拡大しています。
 また、その対象疾患も再生不良性貧血・白血病・一部の遺伝性疾患からリンパ腫や乳がんなどの固形がんまでも含むようになり、海外では自己免疫疾患(膠原病など)に対する移植報告も見られるようになりました。
 日本造血細胞移植学会の集計によれば、2013年までにわが国の造血幹細胞移植登録累積総数は59,000例に達し、最近では年間4,000例以上の移植が、実にさまざまな疾患に対して行われています。
 海外においても、IBMTR(骨髄移植国際登録機構)の報告によれば、2000年1年間だけで同種造血幹移植が約16,000例、自家造血幹細胞移植が約30,000例、計46,000例の各種造血幹細胞移植が行われたとされていると報告されています。
 これからしばらくは、このように対象疾患と造血幹細胞源において多様化し、年々増加しつづけている造血幹細胞移植の現状と問題点について、本邦のデータを基にお話します。

造血幹細胞移植について

不治の病といわれた白血病も、造血幹細胞移植、化学療法、分子標的療法の発展により半分以上の患者さんが治癒するようになりました。そのうち骨髄移植は患者さんの血液を作る組織である骨髄を健康なドナーさんの骨髄と丸ごと入れ替えるという、大きな作業です。
 まず最初に1週間連日で患者さんの骨髄を空にするための強力で大量の抗がん剤投与と放射線を当てます。次にドナーさんの骨髄を腰骨から注射で抜き取ってそれを輸注します。1カ月くらいかかって、患者さんの骨髄から健康な血液細胞が生まれてきます。その間は白血球が0という日が続きますので無菌室に入ります。白血球が回復するとドナーさんの免疫力によって患者さんの肝臓や腸が攻撃を受けるGVHD(移植片対宿主病)が起こります。これが起こらないように、免疫抑制剤を投与します。このため、移植後は強い免疫不全の状態となり、さまざまなウイルスとの戦いになります。最終的に免疫抑制剤が中止となっても、ドナーさんの免疫力と調和が取れれば移植は成功となります。
 かつては移植には骨髄を使っていましたので骨髄移植と呼んでいましたが、最近は末梢血幹細胞、臍帯血なども使うことになり、それらを総称して造血幹細胞移植と呼ぶようになっています。

1. 造血幹細胞移植数の年次推移

図1はわが国における造血幹細胞移植の移植種類別年次推移を日本造血細胞移植学会、日本小児血液学会ならびに厚生省骨髄移植研究班(正岡、柴田班、1990年まで)の全国集計を基に作成したものです。これら以前のまだHLAに関する情報が確立されていなかった時代にも、芳賀(日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院元院長)、原田ら、三好、白神らの報告などにより160例以上の同種骨髄移植がわが国で実施されています。
 1983年に同種骨髄移植療法に健康保険が適用されるようになってからは移植施設数も急速に増えてきました。

(図1)

2. 現在までにわが国で行われた造血幹細胞移植の種類

表1は1974年から今日までに行われた造血幹細胞移植の種類を日本造血細胞移植学会(1)ならびに小児血液学会(2)の全国集計より抽出し示したものです。世界で行われている移植のほとんど全てがわが国においても行われています。

(表1)

3. 造血幹細胞移植の対象とされた疾患

表2に現在までに造血幹細胞移植の対象とされた疾患を同じく日本造血細胞移植学会ならびに小児血液学会の全国集計より抽出し示しました。実に多くの疾患に対して造血幹細胞移植が行われていることがお分かりになると思います。

(表2)

4. 主な造血幹細胞移植成績の年代別推移

造血幹細胞移植の成績は、年々向上してきています。
 年代を追って成績が向上することに貢献した因子としては1984年以降のシクロスポリン(拒絶、GVH病の予防薬です)の導入、1988年以降のG-CSF(白血球増殖因子)の導入、近年の抗ウイルス薬、抗真菌薬の導入などエポックメイキングな薬剤の出現のほか、白血病における寛解期移植の普及、全身放射線照射の分割法の普及、Co-medicalを含めた移植医療チームの充実など骨髄移植への理解が深まったことが挙げられます。

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