小児がん
急性白血病
小児がんの中では白血病が最も多く、小児がんのおよそ40%を占めています。白血病の中では、急性リンパ性白血病が約70%と最も多く、次いで急性骨髄性白血病が25%くらいを占めています。
その昔は、白血病は不治の病と言われて来ましたが、現在では治療の発達により、完全治癒が望める疾患となってきました。この理由としては、抗がん剤の発達により、より有効な組み合わせが分かってきたこと、「リスク分類」といって、どういうタイプの白血病が治りにくいかが分かってきたこと、全国的なグループスタディが行われるようになってきたこと、などが挙げられます。急性リンパ性白血病全体で、70〜80%の無病生存率が期待されています。
1.急性リンパ性白血病(ALL)
現在、日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院小児医療センターはJACLS(小児白血病研究会:Japan Association of Childhood Leukemia Study)という臨床研究グループに所属して、診療を行っています。
小児白血病研究会は1996年に設立され、北海道・東北・東海・関西・京都・中国・四国・九州の各地区の血液疾患の専門病院が白血病の簡便な治癒と安全性の向上を目的として共同で治療を行うために集まった会です。現在進行中の臨床試験として、急性リンパ性白血病に対するALL 02があります。
また、JPLSG(日本小児白血病リンパ腫研究グループ:Japanese Pediatric Leukemia/Lymphoma Study Group)というインターグループにも参加しています。
日本小児がん研究グループ 血液腫瘍分科会(JPLSG)(外部リンク)
これは、JACLSのような各地区のグループで行われていた国内の小児白血病、リンパ腫における臨床試験をインターグループスタディとして行えるよう支えている組織です。現在、乳児ALL治療プロトコール(MLL03)とPh1-ALLプロトコールが急性リンパ性白血病の臨床試験として動いています。
2.急性骨髄性白血病(AML)
JPLSGでは、AML-05という臨床試験が進行中です。特殊な病型として、APL(M3)に対するAML-P05や、ダウン症に合併したAMLに対するAML-D05という臨床試験も同時に進行しています。以前は、急性骨髄性白血病全例に造血細胞移植を行っていましたが、現在では化学療法の進歩により、-7、-5/5q-、t(16;21)(p11;q22)、t(9;22)といった染色体異常を持つものや、FLT-ITD陽性例、寛解導入遅延の症例などの高危険群、再発例のみが移植適応となっています。
悪性リンパ腫
成人ではよく見られる疾患ですが、小児では、白血病ほど見られません。悪性リンパ腫には、ホジキン病と非ホジキンリンパ腫がありますが、欧米と異なり、日本では非ホジキンリンパ腫の頻度が高いことが特徴です。JPLSGでは成熟B細胞性腫瘍に対するB-NHL03、リンパ芽球型リンパ腫に対するLLB-NHL03(stage I/II)、ALB-NHL03(stage III/IV)、anaplastic large cell lymphomaに対するALCL-99という臨床試験が進行中です。
神経芽細胞腫
成人ではよく見られる疾患ですが、小児では、白血病ほど見られません。悪性リンパ腫には、ホジキン病と非ホジキ小児がんの代表的な腫瘍です。以前に行われていた生後6カ月での小児がんマススクリーニングは、この腫瘍を早期に発見するために行われていたものでした。副腎や交感神経節に発生する腫瘍で、病期の進んだ症例では、骨や骨髄に転移することが多く、その予後は進行例で40%と厳しいものになっています。化学療法のみならず、手術療法、放射線療法、造血細胞移植療法を組み合わせた集学的治療が行われています。
2006年にJNBSG(日本神経芽腫研究グループ)が設立され、全国的な治療研究グループとしての活動が始まっています。当院もJNBSGに参加しています。