がんの種類と治療

膵がん

膵がん

膵がんとは?

膵臓は胃の裏側、背骨の前側に位置する細長い臓器で、長さは約15センチ、幅約5センチ、厚さ約2センチです。膵臓の主な働きは、消化酵素を分泌したり、インスリンなどのホルモンを分泌し血糖を調節するなどの働きをしています。
 そこにできるがんのことを膵がんと言いますが、大部分(約85%)は膵管から発生します。膵臓は後腹膜腔内という体の奥にあり、症状も出にくいため、早期の発見、診断が困難であり、膵臓の周りを取り囲む障壁がないため、「がん」が広がってから見つかることが多い、治しにくい「がん」の代表でもあります。
 しかも膵がんは年々増え続けている「がん」の一つで、がんによる死因の第5位となっています。

膵がんによく見られる症状は?

膵臓は細長い臓器ですので、がんのできた場所により症状が異なりますが、主な症状としては、黄疸や上腹部や背中の痛み、倦怠感、食欲不振、体重減少、糖尿病の悪化や急に糖尿病を発症するなどがあります。
 その症状があるから膵がんということではありませんが、胃の検査を受けても異常がなく症状が続くようなことがあればさらに検査を受けられることをおすすめします。

膵がんの病期(進行度)は?

日本膵臓学会による膵癌取り扱い規約と国際的に使用されているUICC分類があります。

病期分類(日本膵臓学会)

I期 がんの大きさが2センチ以下で膵臓内部に限局している状態
II期 がんの大きさは2センチを越え、膵臓内部に限局している状態
または大きさは2センチ以下で、第一群リンパ節まで転移がある状態
III期 がんは膵臓の外へ少し出ているがリンパ節転移はないか、
第一群リンパ節までに限られている。または、がんは膵臓内部に
限局しているが第二群リンパ節まで転移している状態
IV期 Ⅳa期:がんは膵臓の外へ少し出て、第二群リンパ節まで転移している状態
または、がんが膵臓の周囲の臓器や器官に浸潤している状態
Ⅳb期:遠隔転移がある状態

病期分類(UICC分類:国際的に使われている分類)

I期 がんが膵臓の内部に限局し、転移はない状態
II期 がんは膵臓の外へ少し出て主要血管には浸潤はない状態
III期 がんは膵臓に隣接した主要血管に浸潤している状態
IV期 がんが肝臓、肺などに転移している状態

膵がんの治療法は?

治療法としては、手術、放射線療法、化学療法などが一般的に行われます。
 がんの大きさや周囲臓器や脈管への広がり、リンパ節転移や遠隔転移の有無などにより病期(stage)分類され、治療法が選択されます。
 基本的には科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドラインに基づいて治療法を選択していますが、患者さんの状態や状況などにより最善と思われる方法をご相談させていただいています。

A.手術

がんの存在する部位によって術式が異なります。病期がstageⅠ~Ⅲ、stageⅣaの一部では根治術として膵頭十二指腸切除術や膵体尾部切除術、膵全摘術などが行われます。がんを切除できない場合でも通過障害などにより食事摂取困難となる場合などには、QOL(生活の質)を改善する目的で胃空腸吻合術などが行われることがあります。

B.放射線療法

一般的には放射線療法のみ単独で行われることは少なく、手術中に放射線療法を併用することもありますが、最近では化学療法と併用することが多く、その有用性も評価され、膵癌診療ガイドラインでもstageⅣaの進行度の膵がんに対する治療法の標準的な治療法の一つとして位置づけられています。

C.化学療法

早期発見が困難な場合が多いため、抗がん剤治療は多くの膵がん治療の中で重要な位置を占めます。最近ではジェムザールという抗がん剤を週1回外来で、週1回1時間程度の点滴で投与する方法が標準的な治療法として選択されていますが、効果が不十分となった時点でTS-1という内服の抗がん剤に変更してさらに効果の延長を期待する治療を行っています。
 しかし、世界的に膵がんの治療では、未だ満足のいく治療成績は得られず、名古屋大学などを中心とした多施設合同研究などにも参加し、より良い医療を提供するために努力しています。

D.その他

黄疸などを認める場合は胆汁が流れるようにドレナージ術を行いますが、内視鏡的に行う方法(ERBD:内視鏡的胆道ドレナージ術)と経皮的に行う方法(PTCD:経皮経肝胆道ドレナージ術)があります。また、痛みに対しては抗がん剤や放射線療法でも緩和される場合もありますが、鎮痛剤や麻薬性鎮痛剤(モルヒネ)などを適宜使用し、さらに症状の緩和を得るようにしています。痛みを我慢する必要はありませんので、ぜひご相談ください。

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日本赤十字社 愛知医療センター